
都市活動の拡大に伴う緑地の減少は、都市の環境機能の低下をもたらし、ヒートアイランド現象や、大気の汚染、都市防災機能の低下、また、身近で多様な生き物の喪失及びゆとりと潤いのある環境の消滅といった心理的な側面まで影響を及ぼしています。そうした問題の解決方法として、都市、既成市街地における緑化の推進が求められていて、その有力な手段として屋上緑化が注目されています。屋上等の空間は緑化が困難な場所ですが、近年、技術開発がこれを可能にしています。
しかし、その多くは日本本土を中心とした技術開発であり、沖縄県での同様な緑化手法を用いての施工においては、新たに、環境条件等を考慮する必要があります。沖縄県は、海洋性の亜熱帯気候という特殊な環境下にあり、強い日射し、旱魃(かんばつ)、潮風害、スコール、また、頻繁に襲来する台風等の影響を十分に考慮する必要がある。そこで、今回は、沖縄の環境に適した屋上緑化植物資材として、特に、粗放管理に向いた植物について調査しました。
沖縄の厳しい自然環境
台風第14号・最大瞬間風速74m/s 沖縄県宮古島(2003年)



潮風害:台風通過の1週間後、沖縄県本部町(2006年9月)
植物園管理棟の屋上において、在来植物を中心とした25種の植物を軽量人工土壌に植栽し、生育状況の比較試験を実施しました。
1) 植栽試験期間:平成15年3月〜平成17年3月(約2ヶ年)
2) 区画:1㎡(1m×1m) 基盤材厚さ:スーパーソル厚、約9cm 軽量人工土壌厚、10cm
3) 用土:スーパーソル、スーパーソルミックス(軽量人工土壌)
(ピートモス15%、ココピート10%、モミガラ燻炭5%、ヤシガラ10%、島尻赤土 20%、クチャ10%、スーパーソル30%)
※スーパーソル廃ガラス瓶リサイクル資材を利用した無機質系ガラス発泡物で、多孔 質な超軽量資材のこと。


4) 植栽管理:元肥、150g/㎡(マグアンプK)、有機物堆肥を1.5Kg/㎡(みのり)を施用しました。灌水については、植物が萎れてきたら行うようにし、できるだけ無管理状態を維持するようにしました。
5) 供試植物の選定:在来植物を中心とし、潮風害及び乾燥等に強く挿し木等で簡単に増殖できる多年草及び木本性植物としました。| 木本性 | 草本性 | |||
| テリハクサトベラ | (クサトベラ科) | コウライシバ | (イネ科) | |
| モクビャッコウ | (キク科) | サダソウ | (コショウ科) | |
| トゲイボタ | (モクセイ科) | リュウノヒゲ | (ユリ科) | |
| ヒメクマヤナギ | (クロウメモドキ科) | イソフサギ | (ヒユ科) | |
| ヒレザンショウ | (ミカン科) | ミルスベリヒユ | (ザクロソウ科) | |
| アバタマユミ | (ニシキギ科) | オキナワマツバボタン | (スベリヒユ科) | |
| シラタマカズラ | (アカネ科) | タマシダ | (シノブ科) | |
| キダチハマグルマ | (キク科) | |||
| ネコノシタ | (キク科) | |||
| ソナレムグラ | (アカネ科) | |||
| クロイワザサ | (イネ科) | |||
| マルバハタケムシロ | (キキョウ科) | |||
| イワダレソウ | (クカアツヅラ科) | |||
| コゴメマンネングサ | (ベンケイソウ科) | |||
| ヤナギバルイラソウ | (キツネノマゴ科) | |||
| クロジクカリヤスSP | (イネ科) | |||
| エルトロ・芝、交配種 | (イネ科) | |||
| ボルドジンユ | (シソ科) | |||
植栽後2ヵ年経過した各供試植物の生育状況(地上部)を活力度(5段階)として評価して下記に示しました。それにより、屋上緑化に適した植物を選出しました。限られた範囲内(1㎡×10cm)、また、屋上という過酷な環境下の植栽試験で、各植物の環境圧への耐性力の強弱が現れてきました。
| 地上部の活力度評価 | ||||
| 活力度 | 木本性 | 草本性 | 備考 | |
5 |
生育が旺盛で、早い | コウライシバ(イネ科) | 粗放管理可能 | |
| エルトロ・<芝交配種>(イネ科) | 粗放管理可能 | |||
4 |
正常に生育するが部分的に異常が認められる | トゲイボタ(モクセイ科) | リュウノヒゲ(ユリ科) | 粗放管理可能 |
| ヒメクマヤナギ(クロウメモドキ科) | タマシダ(シノブ科) | 粗放管理可能 | ||
| テリハクサトベラ(クサトベラ科) | クロイワザサ(イネ科) | 粗放管理可能 | ||
| ヒレザンショウ(ミカン科) | ヤナギバルイラソウ(キツネノマゴ科) | 粗放管理可能 | ||
3 |
生育不良で異常が目立つ | アバタマユミ(ニシキギ科) | キダチハマグルマ(キク科) | |
| モクビャッコウ(キク科) | ネコノシタ(キク科) | |||
| ミルスベリヒユ(ザクロソウ科) | ||||
| オキナワマツバボタン(スベリヒユ科) | ||||
2 |
生育不良で著しい異常が見られる | シラタマカズラ(アカネ科) | イワダレソウ(クマツヅラ科) | |
1 |
ほとんど生育しない、枯死する。回復しない。 | マルバハタケムシロ(キキョウ科) | ||
| ソナレムグラ(アカネ科) | ||||
| イソフサギ(ヒユ科) | 不向き | |||
| コゴメマンネングサ(ベンケイソウ科) | ||||
| サダソウ(コショウ科) | ||||
今回の調査では木本性のトゲイボタ、ヒメクマヤナギ、テリハクサトベラ、ヒレザンショウ、草本類ではコウライシバ、リュウノヒゲ、タマシダ、クロイワザサ等が、粗放管理においての屋上緑化植物資材として適していると考えられます。
沖縄県における屋上緑化は、沖縄都市モノレールの開業に伴い、那覇市が実施した美観形成の為の補助金制度の導入等により広がりつつありますが、いまだ、多くに普及する傾向が見られていないのが現状です。今回供試した植物に関しては、海岸近くに生育し、潮風、台風等の強風、乾燥等に強い植物を中心に植栽試験を実施しました。その結果、幾つかの候補植物を選出することができました。屋上緑化を実施する際は、施設の特長、植栽場所、周辺環境等を勘案すると共に使用する資材を熟慮して実施する必要があります。